「B型の工賃って、時給にしたら数百円でしょう?」「安すぎて、通う意味があるの?」——インターネットで「工賃 安すぎる」と検索すると、こうした声がたくさん見つかります。ご本人やご家族から、見学の場で率直に聞かれることもあります。この記事では、まず平均額の実態を公的なデータで確かめ、次になぜ工賃が安くなりやすいのかというしくみ、そして国が進めている引き上げ策を順番に整理します。最新の平均額のニュースはB型事業所の工賃、全国平均は月24,141円にでもお伝えしました。
平均額の実態——全国は月24,141円、大阪府は19,747円
厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援B型事業所の平均工賃は月額24,141円(対前年度比106.6%)で、対象の事業所は全国18,245か所です。同じ資料では、平成24年度の平均は14,190円で、少しずつ上がってきていることがわかります。一方、雇用契約を結んで働く就労継続支援A型の平均賃金は月額91,451円です。
- 大阪府は全国平均より低め——大阪府のB型の平均工賃は月額19,747円で、全国平均より4,394円低く、都道府県別では低いほうから2番目です。くわしくは大阪府のB型平均工賃は月19,747円をご覧ください。
- 平均には「通う日数が少ない人」も含まれる——令和6年度の報酬改定で、平均工賃の計算は「1日あたりの平均利用者数」を分母にする方法に変わりました(令和5年度実績から反映)。障がいの特性などで利用日数が少ない方を受け入れる事業所に配慮したもので、以前の数字とは単純に比べられません。
- 平均は「ひとりの金額」ではない——週1日・短時間の方も、毎日通う方もいるので、実際に受け取る額は人によって大きく違います。
なぜ工賃は安くなりやすい?——しくみから見る3つの理由
- 工賃は「作業で得た収入から経費を引いた額」で決まる——国の指定基準(平成18年厚生労働省令第171号 第201条)では、B型の工賃は「生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額」を支払うことと定められています。つまり、事業所が受け取る国の報酬から決まった額が出るのではなく、作業の売上そのものが工賃の元になります。同じ条文で、一人ひとりに支払う1か月の工賃の平均額は3,000円を下回ってはならないとされています。
- 雇用契約がないので、最低賃金が適用されない——B型は雇用契約を結ばない福祉サービスで、出欠や作業時間、作業量は利用者の自由とされています。体調に合わせて休んだり、短い時間だけ通ったりできる代わりに、最低賃金のルールの外にあります。この違いが、A型との金額差の大きな理由です。
- 作業の単価が低くなりやすい——箱折りやシール貼り、袋詰めなどの軽作業は、1個あたりの単価が小さいものが多く、売上を大きく伸ばすのは簡単ではありません。地域によって受注できる仕事や販売の場が違うことも、都道府県ごとの差につながっています。
「安い」のは事実ですが、それは体調や障がいの状態に合わせて、自分のペースで通えるしくみと表裏一体でもあります。障害年金を受け取りながら工賃を得る暮らし方については、障害年金をもらいながら、いくらまで働ける?で整理しています。
国が進める引き上げ策と、事業所の工賃の確かめ方
工賃を上げるために、国はいくつかのしくみを組み合わせています。
- 工賃向上計画——国の「『工賃向上計画』を推進するための基本的な指針」(令和6年3月改正)にもとづき、都道府県と、特別な事情がない限りすべてのB型事業所が、令和6年度から令和8年度までの3年間の計画を作り、毎年の実績を点検しています。指定基準でも、事業所は工賃の水準を高めるよう努め、年度ごとに工賃の目標水準を決めて、前年度の平均額とあわせて利用者に知らせ、都道府県に報告することになっています。
- 平均工賃に応じた報酬——B型事業所が国から受け取る基本報酬は、平均工賃月額の高さに応じて区分が決まるしくみが採られています。工賃を上げる取り組みが、事業所の運営にも反映されるようにするためです。
- 障害者優先調達推進法——平成25年4月に施行された法律で、国や自治体などが障害者就労施設等から物品やサービスを優先的に買うよう努めることを定めています。厚生労働省の公表では、令和6年度の国等の調達額は約246億円で、前年度より4.8%増えました。
事業所を選ぶときは、見学の際に「前年度の平均工賃」と「今年度の目標」、工賃の決め方(時間給か出来高か)、支払日を聞いてみてください。事業所の情報は、障害福祉サービス等情報公表制度(WAM NET)でも確認できます。ただ、工賃の高さだけで選ぶと、作業のペースや体調が合わずに続かないこともあります。事業所選びの見方は「B型作業所 やばい」と検索したあなたへも参考にしてください。
よくあるご質問
- Q. B型の工賃は、なぜ最低賃金より低くてもよいのですか?
A. B型は雇用契約を結ばない障害福祉サービスで、出欠や作業時間、作業量は利用者の自由とされているため、最低賃金は適用されません。工賃は、作業で得た収入から必要な経費を引いた額をもとに支払われます。雇用契約を結んで働くA型には最低賃金が適用されます。 - Q. 工賃の平均額に、決まった最低ラインはありますか?
A. 国の指定基準で、利用者一人ひとりに支払う1か月の工賃の平均額は3,000円を下回ってはならないと定められています。個々の方の金額は、通う日数や時間、作業の内容によって変わります。 - Q. 通っている事業所の工賃の目標は、どうすればわかりますか?
A. 指定基準で、事業所は年度ごとに工賃の目標水準を決め、前年度の平均額とあわせて利用者に知らせることになっています。わからないときは、事業所のサービス管理責任者や職員に聞いてみてください。 - Q. 工賃が安いと、障害年金や生活に影響はありますか?
A. 工賃と障害年金は両方受け取ることができます。ただし、年金の種類や収入の状況によって扱いが異なる場合があります。お金のことで不安があるときは、年金事務所や市町村の窓口、相談支援事業所など専門機関にご相談ください。
工賃の額は大切な目安ですが、自分の体調やペースに合っているかどうかも、続けるうえで同じくらい大切です。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)とさくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)は、知的・身体・精神のどの障がいの方も利用できる就労継続支援B型の事業所です。衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業のほか、絵や詩を描くアート活動にも取り組んでおり、週1日・1日1時間からの通所ができます。約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられ、昼食は300円、送迎のご相談も承ります。見学・体験は無料、ご家族だけの見学・ご相談も歓迎です。工賃のことも、見学の際に遠慮なくお尋ねください。(出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第201条、厚生労働省「就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について」(平成18年10月2日)、「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針(令和6年3月29日 障発0329第42号)、厚生労働省「障害者優先調達推進法に基づく国等による障害者就労施設等からの調達実績(令和6年度)について」(令和7年12月24日)。いずれも2026年10月15日に確認。この記事は一般的な情報提供であり、個別の判断に関する助言ではありません。年金や生活費などお金に関することは、年金事務所やお住まいの市町村の窓口、相談支援事業所など専門機関にご相談ください)