秋は、特別支援学校の高等部で「現場実習」が行われることが多い季節です。実際の職場や事業所で数日〜数週間を過ごす実習は、生徒さんにとっても、ご家族にとっても、卒業後の進路を具体的に考える大切な機会です。一方で、「うまくできなかったらどうしよう」「実習先の評価で進路が決まってしまうの?」と、不安を感じるご家族も少なくありません。この記事では、現場実習を「進路選びの材料」として上手に生かすための考え方をまとめます。
現場実習は「合否」ではなく「確かめる」ための時間
特別支援学校高等部の学習指導要領解説では、「産業現場等における実習」(一般に現場実習や職場実習と呼ばれます)について、現実的な条件のもとで生徒の職業適性などを明らかにし、職業生活や社会生活への適応性を養うことをねらいとしていると説明されています。
- 「できた・できなかった」だけで判断しない……実習は、本人に合う働き方や環境を知るための時間です。うまくいかなかったことも、「この環境は合わない」「こういう支援があればできる」という大切な情報になります。
- 複数の場所を体験してみる……一般企業、就労継続支援A型・B型、生活介護など、性格の違う場所で実習してみると、比べることで本人の得意や苦手が見えやすくなります。
- 学年ごとに目的を変える……文部科学省・厚生労働省の連名の通知では、卒業年次より前の学年も含めて適切な時期に計画的に実施し、卒業年次には実際に想定する進路を念頭に置いて実習を行うことが示されています。
実習で、ご家族が見ておきたい5つのポイント
実習中の様子は、学校の先生や実習先から報告がありますが、家庭でしか見えないこともたくさんあります。次の5つを、ノートやスマートフォンのメモに残しておくと、進路面談のときに役立ちます。
- ① 帰宅後と翌朝の疲れ方……帰ってからぐったりしていないか、翌朝起きられたか。毎日通うことを考えるうえで、とても大切な情報です。
- ② 通う道のり……通勤・通所の時間や乗り換え、人の多さが負担になっていないか。
- ③ 本人の表情と言葉……「楽しかった」「またやりたい」「しんどかった」など、本人の言葉をそのまま書き留めておきましょう。
- ④ 作業との相性……手先を使う作業、体を動かす作業、人と話す作業など、どんな作業のときに集中できていたか。
- ⑤ 困ったときに伝えられたか……わからないことやしんどいことを、周りの人に伝えられたか。伝えやすい雰囲気だったか。
卒業後の選択肢の全体像は特別支援学校卒業後の進路はどうする?に、B型と生活介護の違いは生活介護と就労継続支援B型の違いにまとめています。
実習・アセスメントと、卒業後のB型利用
卒業後に就労継続支援B型を利用する場合は、在学中からの準備が大切です。
- 「就労選択支援」の流れを知っておく……令和7年10月から、B型などを新たに利用する前に、本人の希望や得意・配慮が必要なことを一緒に整理する「就労選択支援」という新しいサービスが始まっています。くわしくは「就労選択支援」とは?をご覧ください。
- 実習とアセスメントを組み合わせられることも……文部科学省・厚生労働省の通知では、学校の教育課程に位置づけられる場合には、同じ活動を授業と就労のアセスメントとして実施できることが示されています。
- 時期と手続きは、学校と市町村に確認を……アセスメントをいつ・どこで受けるか、受給者証の申請をいつ始めるかは、学校や市町村によって異なります。進路担当の先生や、お住まいの市の障害福祉担当窓口に早めに確認しておきましょう。
よくあるご質問
- Q. 現場実習でうまくできなかったら、その進路はあきらめるしかありませんか?
A. そうとはかぎりません。現場実習は、本人に合う働き方や環境を確かめるための機会です。うまくいかなかった理由が「作業内容」なのか「環境」なのか「体調」なのかによって、支援の工夫や別の選択肢が見えてきます。学校の先生と一緒に振り返ってみてください。 - Q. 実習先は家族が選べますか?
A. 実習先は、学校が本人の希望や適性、受け入れ先の状況をふまえて調整するのが一般的です。ご家族として気になる事業所がある場合は、進路面談などで先生に伝えてみてください。在学中にご家族が個別に見学に行くこともできます。 - Q. 卒業後すぐにB型を利用するには、何を準備すればいいですか?
A. 令和7年10月から始まった就労選択支援など、B型の利用前に必要な手続きがあります。アセスメントを受ける時期や受給者証の申請の時期は、学校や市町村によって異なりますので、進路担当の先生と、お住まいの市の障害福祉担当窓口に早めにご確認ください。 - Q. 在学中に、さくら福祉訓練所・さくら作業所を見学できますか?
A. はい、在学中の見学も歓迎しています。見学・体験は無料で、ご家族だけでのご相談もできます。学校の実習としての受け入れについては、学校の先生を通じてご相談ください。
現場実習は、本人の「これから」を一緒に考えるための大切な材料です。結果だけにとらわれず、本人の表情や言葉を大切にしてください。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)では衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業、絵や詩を描くアート活動に、さくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)ではお弁当作りや調理補助、お米の選別、箸袋入れなどの軽作業やパソコン練習に取り組んでいます。週1日・1日1時間からの通所ができ、約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられます。昼食は300円、送迎のご相談も承ります。見学・体験は無料で、ご家族だけでもお越しいただけます。(この記事は、特別支援学校の現場実習と卒業後の進路に関する一般的な情報提供です。実習の内容や時期、就労選択支援・受給者証の手続きは、学校や市町村によって異なります。具体的なことは在籍する学校の進路担当の先生、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口、相談支援専門員にご相談ください。出典:文部科学省「特別支援学校高等部学習指導要領解説」、文部科学省・厚生労働省「就労系障害福祉サービスにおける教育と福祉の連携の一層の推進について」(平成29年4月25日)、厚生労働省「就労選択支援について」)