「病院のデイケアには何年か通っています。でも、そろそろ次に進んだほうがいいのでしょうか」——見学にいらっしゃる方から、とてもよくいただくご相談です。デイケアもB型も、どちらも「日中に通う場所」であることは同じ。だから違いが分かりにくく、比べようがない、と感じてしまいます。実はこの二つは、根っこの制度からして別のものです。そこが分かると、迷いはずいぶん小さくなります。今回は、その違いをできるだけやさしく整理してみます。
いちばん大きな違いは「医療」か「福祉サービス」か
精神科デイケアは、医療です。病院やクリニックが行うもので、費用には医療保険が使われます。厚生労働省の診療報酬の通知では、精神科デイ・ケアは「精神疾患を有するものの社会生活機能の回復を目的として、個々の患者に応じたプログラムに従ってグループごとに治療するもの」と定められています。つまり、目的は「治療」です。主治医の指示のもとで行われ、記録も診療録に残ります。
いっぽう就労継続支援B型は、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスです。運営するのは病院ではなく事業所で、目的は「治療」ではなく就労の機会と生産活動の機会を提供すること。雇用契約は結びませんが、作業をした分だけ工賃が支払われます。利用するには、お住まいの市町村から受給者証の交付を受ける必要があります。
ですので「デイケアとB型、どちらがレベルが上か」という比べ方は、あまり意味がありません。体調をととのえる時期には医療が、働く練習をする時期には福祉サービスが、それぞれ力を発揮します。似ているサービスの整理としては、A型とB型のちがいや生活介護とB型のちがいの記事もあわせてご覧ください。
時間・お金・受け取るもの——具体的に比べてみます
◎ 通う時間
デイケアには時間の目安が制度で決まっています。厚生労働省の通知によると、実施時間は患者1人あたり1日につき、精神科ショート・ケアが3時間、精神科デイ・ケアが6時間、精神科ナイト・ケアが4時間(開始は午後4時以降)、精神科デイ・ナイト・ケアが10時間が標準です。ご自身の体力に合わせて、まず短いショートケアから、という組み立てもできます。
また、同じ医療機関でデイケア等を開始した日から1年を超えると、原則として1週間に5日までが限度となる決まりもあります(一定の条件を満たす場合を除きます)。「ずっと同じペースで通い続ける」ことは、制度のうえでも前提にはなっていない、ということです。
B型のほうは、通う日数や時間を事業所と相談して決めます。さくらの場合は週1日・1日1時間から始められます。
◎ かかるお金
デイケアは医療なので、通常は医療費の3割が自己負担です。ただし自立支援医療(精神通院医療)で軽減を受けられる医療の範囲には、厚生労働省の資料にはっきりと「デイ・ケア」が含まれています。認定を受ければ自己負担は1割に軽減され、さらに世帯の所得に応じて1か月あたりの上限額が設けられます。受給者証の有効期間は1年以内で、更新の申請はおおむね期間終了の3か月前から受け付けられます。申請の窓口は、お住まいの市町村です。
B型は障害福祉サービスなので、こちらも世帯の所得に応じた負担上限が別に定められています。さくらでは実際に、約9割の方が自己負担0円で通われています。
◎ 受け取るもの
ここが、いちばん実感の違うところかもしれません。デイケアはお金を払って治療を受ける場です。B型は作業をして工賃を受け取る場です。厚生労働省の「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、B型事業所の平均工賃は月額24,141円(全国18,245か所の集計。前年度の22,649円から106.6%)。もちろん通所日数や作業内容で大きく変わりますので、週1日から始めた方は数千円ということもあります。金額そのものより、「働いて受け取った」という手ざわりが、次の一歩につながっていきます。
「どちらか」ではなく、「順番」と「組み合わせ」で考える
ご相談を受けていて思うのは、多くの方にとってこれは二者択一ではなく、順番の問題だということです。
- まだ生活リズムが不安定なとき——起きる時間、食べる時間、人と過ごす時間をととのえる段階。医療の枠の中で、主治医とつながりながら過ごせるデイケアが力になります
- 通うことに慣れて、手を動かしたくなってきたとき——「役割がほしい」「少しでも収入がほしい」と感じ始めたら、B型が視野に入ってきます
- その中間のとき——制度が別なので、曜日や時間帯を分けて両方を利用している方もいます。ただし同じ日の同じ時間に重ねることはできず、取り扱いは自治体や医療機関によって異なります
切り替えを考えるときの順番は、だいたいこうなります。①主治医に相談する(体調の面でいまが適切な時期か)→②市町村の障害福祉窓口か相談支援事業所に相談する(受給者証の手続き)→③事業所を見学・体験する。③は①②と並行して進めてかまいません。むしろ先に見ておくと、「ここなら通えそう」という実感が判断の助けになります。見学・体験の流れもあわせてご覧ください。
そして、急がなくて大丈夫です。デイケアをやめてからB型を探さなければならない、というものでもありませんし、B型に来てみて「まだ早かった」と感じたときに立ち止まる選択もあります。大切なのは、いまのご自身の状態に合った場所を選ぶこと。どの制度が合うかという判断は医療的・行政的な判断をともないますので、必ず主治医や市町村の窓口など、専門機関にご相談ください。
よくあるご質問
- Q. 精神科デイケアとB型、どちらから始めるのがよいですか?
A. 体調がまだ不安定で、まず生活リズムを整えたい段階ならデイケアが向いていることが多く、「作業をして工賃を受け取る」段階まで来ていればB型が合いやすいです。ただし判断は体調や生活状況によって変わりますので、主治医や相談支援専門員にご相談ください。 - Q. 精神科デイケアと就労継続支援B型は同時に使えますか?
A. デイケアは医療保険、B型は障害者総合支援法の障害福祉サービスで制度が別のため、曜日や時間帯を分けて両方を利用している方もいます。ただし同じ日の同じ時間に重ねることはできず、取り扱いは自治体や医療機関によって異なります。市町村の障害福祉窓口・主治医にご確認ください。 - Q. 精神科デイケアの費用はどれくらいですか?
A. デイケアは医療保険が使われるため、通常は医療費の3割が自己負担です。ただし自立支援医療(精神通院医療)の対象医療にはデイ・ケアが含まれており、認定を受けると自己負担が1割に軽減され、さらに世帯の所得に応じて1か月あたりの上限額が設けられます。申請はお住まいの市町村の窓口です。 - Q. デイケアからB型に切り替えたいときは何から始めればいいですか?
A. まず主治医に相談し、次にお住まいの市町村の障害福祉窓口か相談支援事業所で受給者証の手続きについて聞いてください。並行して事業所の見学・体験をしておくと、手続きが進んだときにスムーズです。さくらでは見学・体験は無料で、週1日・1時間から始められます。
デイケアからの一歩を考えている方も、まだ迷っている方も、まずは場所の空気を見に来てください。さくらでは週1日・1時間からの通所ができ、見学・体験は無料です。ご家族だけの見学も歓迎しています。(出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法」に係る留意事項通知(精神科専門療法 I008-2・I009・I010・I010-2)、厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」、厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」、厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」。この記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は主治医・市町村の窓口など専門機関にご相談ください)