「働くことで困っているのに、支援の案内を見ると『障害者手帳をお持ちの方』『診断を受けた方』と書いてある」「病院では『グレーゾーンですね』と言われただけで、どこに相談すればいいのかわからない」——そんな思いで検索された方も多いと思います。グレーゾーンとはどういう状態か、診断がなくても困りごとは本物であることは診断がつかない「発達障害グレーゾーン」——名前がなくても、支援は受けられますでお伝えしました。この記事ではその続きとして、「働くこと」に絞って、診断名や手帳がなくても使える就労支援を、条件の違いごとに整理します。先にお伝えしておくと、「手帳がないから」「診断がないから」という理由だけで、相談の扉が閉じているわけではありません。
診断も手帳もなくても相談できる、就労の窓口
まず、診断や手帳の有無を問わずに相談できる公的な窓口です。どれも相談は無料です。
- 発達障害者支援センター……都道府県・指定都市が設置する発達障害の専門相談窓口で、診断がなくても、「疑いがある」段階でも相談できます。ご家族だけの相談も受け付けています。藤井寺市など大阪府内(大阪市・堺市を除く)にお住まいの方は「大阪府発達障がい者支援センター アクトおおさか」、堺市にお住まいの方は「堺市発達障害者支援センター アプリコット堺」が窓口です。なお、支援センターは診断や検査を行う場所ではありません。
- 地域障害者職業センター……独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が各都道府県に設置している、働くことの専門機関です。就職や職場への適応、復職などに支援が必要な方であれば、障害者手帳の有無を問わず利用できるとされています。自分の得意・苦手を整理する職業評価や、働く準備のための「職業準備支援」があります。大阪では大阪障害者職業センターと、堺市にある南大阪支所が窓口です。主治医の意見書などがあれば支援を組み立てやすくなるため、初回相談の前にお問い合わせください。
- 地域若者サポートステーション(サポステ)……働くことに悩みを抱えている15歳から49歳までの方を対象に、厚生労働省の委託で全国に設置されている窓口です。障害の有無を条件としていないので、「発達障害かどうかはわからないけれど、仕事が続かない」という段階でも相談できます。面談やコミュニケーションの講座、職場体験などが用意されています。
- ハローワーク……一般の窓口はどなたでも利用できます。障害のある方向けの専門援助の窓口は、手帳がなくても、医師の診断書や意見書で発達障害が確認できれば利用できます。まだ診断がない方も、まずは一般の窓口で「特性のことで働き方に悩んでいる」と伝えてみてください。どの窓口が合うかを一緒に考えてもらえます。
「どこに行けばいいか決められない」ときは、障害者就業・生活支援センターや、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口に「どこに相談すればいいか」を聞くところからでも大丈夫です。窓口どうしはつながっているので、最初の1か所が合っていなくても、適した窓口を紹介してもらえます。
医師の意見書があれば使える「障害福祉サービス」——就労移行支援・B型など
就労移行支援や就労継続支援B型、自立訓練(生活訓練)といった障害福祉サービスは、障害者手帳がなくても利用できる場合があります。利用に必要なのは手帳ではなく、市町村が発行する「障害福祉サービス受給者証」だからです。手帳がない場合は、医師の診断書や意見書などで支援の必要性を確認したうえで、市町村が利用を判断します。必要な書類や判断の基準は市町村によって違うため、まずは窓口に確認するのが確実です。堺市では、精神障害(発達障害を含む)の方の申請窓口は各区の保健センター(美原区は地域福祉課)とされています。受給者証の取り方はB型を利用するには?受給者証の取り方と見学からの流れでくわしくご説明しています。
ここで大切なのは、「グレーゾーン」と言われた方でも、主治医に一度相談してみる価値があるということです。診断名がはっきりつかなくても、生活や仕事の困りごとについて意見書を書いてもらえることがあります。一方で、医師が書けるかどうか、どう書くかは医師の判断です。受診の間隔が空いていると書類を書いてもらえないこともあるため、「働くための支援を使いたい」と、正直に目的を伝えて相談してみてください。
また、B型については、令和7年10月から新たに利用する方の多くが、事前に「就労選択支援」という短期間のアセスメント(働く力や希望の整理)を受けることになりました。50歳以上の方や障害基礎年金1級を受けている方、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業で働くことが難しくなった方などは対象外で、直接B型を利用できる場合があります。自分がどちらに当たるかは、市町村の窓口や相談支援専門員が一緒に確認してくれます。
どこから始める?——いまの状態別の早見表
使える支援がいくつもあると、かえって迷ってしまいます。いまの状態に近いものを1つ選んで、そこから始めてみてください。
- まだ受診していない・特性があるのかもわからない……発達障害者支援センターに「相談だけ」してみる。受診先の情報も得られます。
- 一般の職場で働きたい・仕事が続かない理由を整理したい……サポステ(49歳まで)やハローワーク、地域障害者職業センターで、働き方の相談と職業評価を受ける。
- いきなり就職は不安・まずは生活リズムや体力を整えたい……主治医に相談のうえ、受給者証を取ってB型や自立訓練で「働く練習」から始める。
- 障害者雇用という働き方も考えたい……障害者雇用の求人に応募するには、原則として障害者手帳が必要です。手帳の種類や申請については主治医や市町村の窓口にご相談ください。
どの道を選んでも、あとから変えることができます。グレーゾーンの方にとって大事なのは、「どんな環境なら力を出しやすいか」を、実際に試しながら知っていくことです。窓口での相談も、見学も、そのための材料集めだと考えてみてください。
よくあるご質問
- Q. 発達障害の診断がついていなくても、就労支援の相談はできますか?
A. できます。発達障害者支援センターは診断がなくても、疑いがある段階でも無料で相談できます。地域障害者職業センターは障害者手帳の有無を問わず利用でき、地域若者サポートステーション(サポステ)は障害の有無を条件とせず、働くことに悩む15歳から49歳の方が相談できます。ハローワークの一般の窓口もどなたでも利用できます。 - Q. 障害者手帳がなくても、B型や就労移行支援は使えますか?
A. 使える場合があります。利用に必要なのは手帳ではなく市町村が発行する受給者証で、手帳がない場合は医師の診断書や意見書などをもとに市町村が判断します。必要な書類や基準は市町村によって異なりますので、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員にご確認ください。 - Q. グレーゾーンと言われた場合でも、医師に意見書を書いてもらえますか?
A. 診断名がはっきりしなくても、生活や仕事の困りごとについて意見書を書いてもらえることはあります。ただし、書けるかどうか、どのように書くかは医師の判断です。受診の間隔が空いていると書いてもらえないこともあるため、「働くための支援を使いたい」という目的を伝えて、主治医にご相談ください。 - Q. 家族だけで相談に行ってもいいですか?
A. 大丈夫です。発達障害者支援センターはご家族だけの相談も受け付けています。B型事業所の見学も、ご家族だけでお越しいただけます。ご本人が外出や相談に踏み出しにくい時期は、まずご家族が情報を集めておくことも立派な一歩です。
診断名がなくても、困りごとがあるなら、相談していい理由は十分にあります。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)では衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業、絵や詩を描くアート活動に、さくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)ではお弁当作りや調理補助、お米の選別、箸袋入れなどの軽作業やパソコン練習に取り組んでいます。週1日・1日1時間からの通所ができるので、「どんな作業なら続けやすいか」「どのくらいの時間なら疲れすぎないか」を少しずつ試すことができます。約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられ、昼食は300円、送迎のご相談も承ります。見学・体験は無料で、診断や手帳がない段階でも、ご家族だけでもお越しいただけます。受給者証の手続きについても、見学のときに一緒に確認します。(この記事は、就労支援制度に関する一般的な情報提供です。診断・治療に関する医学的助言ではありません。発達障害かどうかの判断や医師の意見書については主治医など専門機関に、障害福祉サービスの利用の可否や必要書類はお住まいの市町村の障害福祉担当窓口にご相談ください。出典:国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害ナビポータル」、大阪府「大阪府発達障がい者支援センターアクトおおさか」、堺市発達障害者支援センター アプリコット堺、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」「大阪障害者職業センター」、厚生労働省「地域若者サポートステーション」「就労選択支援について」、ハローワークインターネットサービス「障害のある皆様へ」、堺市「障害福祉サービス利用の手続き」)