今年の9月は、19日(土)から23日(水・秋分の日)まで5連休になります。家族が同じ家で過ごす時間が長くなるこの時期は、障がいのあるお子さんやごきょうだいのいるご家族にとって、「これから」を少しだけ話してみるチャンスでもあります。とはいえ、「将来のことを考えると不安で、何から話せばいいかわからない」「話し始めると重い空気になってしまう」という声もよく聞きます。親なきあとに向けた住まい・お金・意思決定・つながりの4つの準備はお盆に家族が集まったら話したい「親なきあと」——今日からできる4つの準備でご紹介しました。この記事では、その手前の「どう話すか」に絞って、大きな不安を小さく分けて、一つずつ話せる形にする方法をお伝えします。
「将来が不安」を、5つの小さな箱に分けてみる
「将来が不安」という気持ちは、大きなかたまりのままだと、どこから手をつけていいかわからなくなります。まずは、不安をいくつかの箱に分けてみてください。多くのご家族の不安は、だいたい次の5つに分けられます。
- 暮らす場所……この先もずっと実家で暮らすのか、いつかグループホームや一人暮らしを考えるのか。
- お金……いま何で暮らしていて、親の収入がなくなったら何が柱になるのか。
- 日中の過ごし方……平日の昼間をどこで、誰と、どのように過ごしているか。通える場所はあるか。
- 体調と通院……かかりつけの病院、飲んでいるお薬、調子を崩したときのサイン。
- 困ったときに頼れる人と手続き……家族以外に本人のことを知っている人は誰か。役所や事業所の手続きを誰が把握しているか。
箱に分けたら、それぞれについて紙に3つの欄を作ってみます。「わかっていること」「まだわからないこと」「誰に聞けばわかりそうか」の3つです。書き出してみると、不安の多くは「まだ調べていないだけ」のことだったり、「誰に聞けばいいかさえわかれば動ける」ことだったりします。反対に、本当に家族で決めなければならないことは、思っているより少ないものです。
そして大切なのは、この連休で全部の箱を埋めようとしないことです。今回は1つの箱だけ、それも「わかっていること」を書き出すだけで十分です。住まいについて考え始めた方は、グループホームに住みながらB型に通えますか?もあわせてご覧ください。
話し合いを重くしないための5つのコツ——本人を真ん中に
厚生労働省は令和8年9月、障害福祉サービスの支援者向けに「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」の第2版を示しました。そこでは「意思決定の主体はあくまでも本人」という考え方が改めて明記され、ご本人の声をもとにまとめた信条の一つとして「わたしのことについて話し合う場には必ずわたしが参加できるようにしてください」という言葉が紹介されています。支援者向けの指針ですが、家族の話し合いにもそのまま通じる考え方です。
- 本人のいる場で話す……親だけで決めてから伝えるのではなく、最初から本人も一緒に。言葉でのやりとりが難しい方も、同じ場にいて、表情や反応を大切にすることができます。
- 「どうする?」より「何が好き?」から……「将来どうしたい?」と聞かれても、答えにくいものです。「どこにいると落ち着く?」「どんなときが楽しい?」といった、好きなこと・苦手なことから聞くと、本人の希望が見えてきます。
- 知らないことは、決めずに「試す」……経験したことがないものは、選びようがありません。ガイドラインでも、本人が意思を形づくるには体験が大切だとされています。グループホームの体験利用や事業所の見学のように、「まず試してみる」を選択肢に入れてください。
- 1回30分、結論は出さない……「今日決める」と構えると、本人も家族も疲れてしまいます。短く区切り、「いやだ」「ちがう」も言いやすい雰囲気で。途中で考えが変わるのも自然なことです。
- ごきょうだいを「次の親」にしない……ごきょうだいに全部を引き継ぐのではなく、「知っておいてもらう」ところまでを目安に。制度や支援者と役割を分け合う前提で話すと、それぞれの肩の荷が軽くなります。
もう一つおすすめしたいのが、親の頭の中にしかない情報を書き出しておくことです。好きな食べ物や苦手な音、落ち着く方法、お薬や通院先、利用している事業所や相談支援専門員の連絡先などを1冊のノートにまとめておくと、いざというときに周りの人が本人を支えやすくなります。
話し合いのあとは、家族だけで抱えずに「1つだけ」動く
話し合いで出てきた「まだわからないこと」は、家族だけで答えを出そうとしなくて大丈夫です。相談できる先はいくつもあります。
- 相談支援専門員・市の障害福祉担当窓口……障害福祉サービスを使っている方は、サービス等利用計画を作る相談支援専門員に「将来のことも相談したい」と伝えてみてください。まだ使っていない方は、お住まいの市の窓口(藤井寺市は福祉総務課、堺市は各区役所の担当窓口)や、市が委託する相談支援事業所に相談できます。
- 地域生活支援拠点等……親の急病などの緊急時の受け入れや対応、親元から離れて暮らす前のグループホームや一人暮らしの体験の機会などを、地域の事業所が連携して担うしくみです。令和6年度からは障害者総合支援法に位置づけられ、整備が市町村の努力義務になりました。堺市には、同居しているご家族が急病などで介護できなくなったときの「障害者緊急時対応事業」があります(対象の条件があり、事前の登録が必要です)。お住まいの地域の状況は、市の窓口でご確認ください。
- 障害者就業・生活支援センター……働くことと暮らしのことを一緒に相談できます。くわしくは障害者就業・生活支援センターとは?でご紹介しています。
「日中の過ごし方」の箱が空いている場合は、通える場所を持つこと自体が、親なきあとへの備えになります。通い慣れた場所があり、本人のことを知っているスタッフや仲間がいることは、家族以外の「頼れる人」を増やすことでもあるからです。
よくあるご質問
- Q. 本人が将来の話をいやがります。どうすればいいですか?
A. 無理に話を進める必要はありません。「将来」という大きな言葉を使わずに、好きなことや最近楽しかったことなど、話しやすい話題から短く始めてみてください。ご本人が話しにくい時期は、ご家族だけで先に相談窓口や事業所の見学に行き、情報を集めておくのも一つの方法です。 - Q. 本人が言葉で気持ちを伝えるのが難しい場合は、どう話し合えばいいですか?
A. 言葉だけでなく、表情やしぐさ、これまでの暮らしの中で好んできたことにも、ご本人の気持ちは表れています。写真や実物を見せて選んでもらったり、見学や体験で実際の様子を見てもらったりすると、反応から気持ちが見えてくることがあります。日頃の様子をよく知る支援者と一緒に考えるのもおすすめです。 - Q. 何から話し始めればいいかわかりません。
A. 「暮らす場所」「お金」「日中の過ごし方」「体調と通院」「困ったときに頼れる人と手続き」の5つのうち、気になるものを1つだけ選び、「わかっていること」を書き出すところから始めてみてください。1回で全部を決める必要はありません。 - Q. ごきょうだいにどこまで頼んでおけばいいですか?
A. ご家族によって事情はさまざまですが、全部を引き継ぐ前提にせず、まずは「本人のことを知っておいてもらう」ことを目安に、ごきょうだいご自身の気持ちも聞きながら話し合ってみてください。成年後見制度や財産のことなど法的な手続きが関わる内容は、市の窓口や社会福祉協議会、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。
連休のあいだに全部を決めなくて大丈夫です。1つの箱を開けてみるだけでも、立派な一歩です。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)では衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業、絵や詩を描くアート活動に、さくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)ではお弁当作りや調理補助、お米の選別、箸袋入れなどの軽作業やパソコン練習に取り組んでいます。週1日・1日1時間からの通所ができ、約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられます。昼食は300円、送迎のご相談も承ります。C・ドリームの会ではグループホームも運営していますので、住まいのことも含めてご相談いただけます。見学・体験は無料で、ご家族だけでもお越しいただけます。(この記事は、ご家族の話し合いと相談先に関する一般的な情報提供です。医学的・法的な助言ではありません。障害福祉サービスの利用や緊急時の支援の対象かどうかはお住まいの市の障害福祉担当窓口に、成年後見制度や財産管理などの法的な手続きは社会福祉協議会や弁護士・司法書士などの専門機関にご相談ください。出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(第2版)改訂の背景とポイント」(令和8年9月)、厚生労働省「地域生活支援拠点等について」、堺市「堺市障害者緊急時対応事業実施要綱」、藤井寺市「相談支援事業について」)