「アスペルガー 仕事」「ASD 向いている仕事」——そう検索して、職業の一覧を眺めてみたものの、かえって迷ってしまった方もいるのではないでしょうか。自閉スペクトラム症(ASD)の特性の出方は一人ひとり違うため、同じ職業でも合う人と合わない人がいます。この記事では、向いている職業名を探すよりも、自分の「得意」が出やすい条件を見つけるという考え方で、特性のおさらい、得意を見つける手がかり、職場でできる工夫、そしてB型で少しずつ試す方法を順番に整理します。
ASD(自閉スペクトラム症)とは——名前と特性のおさらい
発達障害者支援法では、発達障害の例として「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」が挙げられています。アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5では、これらは自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)と呼ばれています。「スペクトラム」は連続体という意味で、特性の強さや現れ方に幅があることを表しています。
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、ASDの特性として次のようなことが紹介されています。
- やりとりの難しさ——言葉や視線、表情、身振りなどを使って相互にやりとりしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手
- 強い関心とこだわり——特定のことに強い関心をもつ、こだわりが強い
- 感覚の過敏さ——音や光、肌ざわりなどの感覚が過敏であることがある
- 変化への苦手さ——初めてのことや、決まっていたことが変更されることが苦手で、環境になじむのに時間がかかることがある
同じサイトでは、大人になってから、仕事を臨機応変にこなせないことや対人関係に悩む方がいることにもふれています。一方で、視覚的な手がかりを使ったり、先の見通しを持ちやすく示したりすることで安心して過ごしやすくなることも紹介されています。つまり、苦手が出にくい環境を整えると、もともと持っている力が発揮されやすくなるということです。なお、ASDかどうかの判断は医師が行うものです。「もしかして」と感じている方は、「発達障害かも」セルフチェックのあと、どうすれば?で受診と支援の順番を整理しています。
「得意」は職業名ではなく「条件」で見つける——5つの手がかり
特性は、場面によって「苦手」にも「得意」にもなります。たとえば「決まったやり方へのこだわり」は、急な変更がある職場ではつらさになりますが、同じ手順をていねいに繰り返す作業では正確さという強みになることがあります。「細かいところが気になる」ことが、検品や仕分けで小さな違いに気づく力として役立つ方もいます。大切なのは、どんな条件のときに自分の力が出やすいかを知ることです。次の5つを手がかりにしてみてください。
- 「時間を忘れたこと」「ほめられたこと」を書き出す——学校や家、以前の職場で、気づいたら集中していた作業や、人から認められたことを思い出してみます。作業の中身だけでなく、そのときの環境(静かだった、ひとりだった、見本があった等)もメモしておきます。
- しんどかった場面を「条件」に分けてみる——「仕事が合わなかった」で終わらせず、音がうるさかった、指示があいまいだった、急な予定変更が多かった、電話対応があった、など何がつらかったのかを分けて考えます。苦手な条件がわかれば、それを避けた働き方を選びやすくなります。
- 短い時間で、いくつかの作業を試す——頭で考えるより、実際にやってみるほうが確かです。最初から長時間・一つの作業に決めず、短い時間で何種類かを試してみると、自分に合うものが見えてきます。
- その日の記録をつける——どの作業をして、どれくらい集中できたか、どれくらい疲れたかを簡単に記録します。数週間続けると、得意な作業と疲れやすい条件の傾向がわかります。
- 支援者と一緒にふり返る——自分では当たり前と思っていることが、ほかの人から見ると強みだったということもあります。家族や支援者、主治医など、身近な人の意見も聞いてみてください。
得意を活かすための職場の工夫と、B型での試し方
厚生労働省の「合理的配慮指針」(平成27年厚生労働省告示第117号)には、障害者雇用の職場で事業主が行う配慮の例として、発達障害のある方について次のようなものが挙げられています。
- 業務の指導や相談について、担当者を決める
- 業務の指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業の手順を図などを使ったマニュアルにする
- 出退勤の時刻・休暇・休憩について、通院や体調に配慮する
- 感覚過敏を和らげるため、サングラスの着用や耳栓の使用を認める
- 本人のプライバシーに配慮したうえで、ほかの従業員に障害の内容や必要な配慮を説明する
合理的配慮は、本人と事業主が話し合って、その人に合った内容を決めていくものです。こうした工夫は、就職の前に「どんな配慮があれば力を発揮しやすいか」を自分で知っておくと、伝えやすくなります。
その「自分を知る」段階で役に立つのが、就労継続支援B型です。B型は雇用契約を結ばずに、体調やペースに合わせて通える福祉サービスで、事業所では一人ひとりの個別支援計画を作り、少なくとも6か月に1回以上見直します。作業をしながら、合う作業や苦手な条件を職員と一緒に確かめ、計画に反映していくことができます。最初は短い時間から始めて、少しずつ広げていけば大丈夫です。通い方の考え方は週1日・1時間から始める通所リズムや、「作業所なのに作業しない人がいる」って本当?もご覧ください。診断名がはっきりしていない方が使える支援については、発達障害グレーゾーンで使える就労支援で紹介しています。
よくあるご質問
- Q. アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症は、別のものですか?
A. 発達障害者支援法では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」が発達障害の例として挙げられており、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5ではこれらは自閉スペクトラム症と呼ばれています。以前の診断名で説明を受けた方もいますので、ご自身の診断の内容については主治医にご確認ください。 - Q. ASDの人に向いている仕事は決まっていますか?
A. 決まっていません。特性の出方は一人ひとり違うため、同じ仕事でも合う方と合わない方がいます。職業名よりも、指示の出され方や音・人の多さ、作業の手順など「どんな条件なら力を出しやすいか」を知ることが、仕事選びの手がかりになります。 - Q. 人と話すのが苦手でも、B型に通えますか?
A. 通えます。B型の作業には、ひとりで手を動かす作業も多くあります。話すことに不安があるときは、見学や相談の際にその気持ちを伝えてください。筆談やメモでのやりとりなど、伝え方の工夫も一緒に考えます。 - Q. 音や光がつらいときは、どうすればよいですか?
A. 国の合理的配慮指針でも、感覚過敏を和らげるためにサングラスの着用や耳栓の使用を認めることが配慮の例として挙げられています。通う場所や職場で相談してみてください。つらさが強いときや体調への影響が心配なときは、主治医や専門機関にご相談ください。
「得意」は、安心できる環境で少しずつ試すなかで見つかっていくものです。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)とさくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)は、知的・身体・精神のどの障がいの方も利用できる就労継続支援B型の事業所です。衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業のほか、絵や詩を描くアート活動にも取り組んでおり、週1日・1日1時間からの通所ができます。約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられ、昼食は300円、送迎のご相談も承ります。見学・体験は無料、ご家族だけの見学・ご相談も歓迎です。苦手なことや不安なことも、見学の際に遠慮なくお話しください。(出典:発達障害者支援法 第2条、国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「諸外国の『発達障害』の用語の使用と支援の概要」、国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」発達障害(神経発達症)、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針(合理的配慮指針・平成27年厚生労働省告示第117号)、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条・第202条。いずれも2026年10月16日に確認。この記事は一般的な情報提供であり、診断や治療に関する助言ではありません。ご自身の状態については、主治医や発達障害者支援センターなど専門機関にご相談ください)