「就職が決まった。うれしいけれど、ちゃんと続けられるだろうか」「職場で困ったとき、誰に相談すればいいのか」——B型などの事業所から一般就労をめざす方や、そのご家族から、こうした声をよくお聞きします。就職はゴールではなく、新しい生活のスタートです。仕事そのものよりも、生活リズムや体調、職場の人間関係といった「働き始めてから出てくる困りごと」のほうが、続けるうえでの壁になることも少なくありません。そこで国は、就職した「あと」を支えるしくみを用意しています。この記事では、厚生労働省の基準をもとに、就職後の最初の6か月と、その後に使える「就労定着支援」というサービスを中心にご紹介します。B型から一般就労をめざすまでのステップはB型から一般就労は目指せる?——ステップと使える支援制度をやさしく解説にまとめていますので、あわせてご覧ください。
就職してからの最初の6か月——通っていた事業所が支えます
障害福祉サービスの事業所が守るべきことを定めた国の基準(平成18年厚生労働省令第171号)では、就労移行支援の事業所は、利用者さんが就職した日から6か月以上、障害者就業・生活支援センターなどの関係機関と連携して、職業生活についての相談などの支援を続けなければならないとされています(第182条)。就労継続支援A型・B型、生活介護の事業所にも、同じように就職した日から6か月以上の支援を続ける努力義務が定められています(第195条。B型には第202条で準用、生活介護は第85条の2)。
つまり、B型から就職された場合も、最初の半年は、それまで通っていた事業所が「顔なじみの相談相手」として支えることが基準の中に位置づけられています。新しい職場では言いにくいことも、慣れたスタッフになら話せる——という方は少なくありません。
厚生労働省の資料では、就職後に生じやすい生活面の課題として生活リズム、体調の管理、給料の浪費などが挙げられ、職場で見られるサインの例として次のようなものが示されています。
- 遅刻や欠勤が増える
- 業務中に居眠りをしてしまう
- 身だしなみが乱れてくる
- 薬の飲み忘れ
どれも、ご本人の「やる気」の問題ではなく、環境の変化による疲れや生活の乱れから起こりやすいものです。ご家族が家で気づいたときは、ひとりで抱え込まず、早めに事業所や支援機関に相談してください。体調の記録をつけておくと、相談のときに状況を伝えやすくなります(お薬と体調の記録で「自分のトリセツ」を作る)。
6か月を過ぎたら「就労定着支援」——どんなサービス?
就労定着支援は、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスのひとつです。厚生労働省は、対象となる方を次のように説明しています。
- 生活介護、自立訓練、就労移行支援または就労継続支援(A型・B型)を利用したあと、通常の事業所に新たに雇用された方で、働き続けている期間が6か月を過ぎた方
- 病気や障害で休職し、就労移行支援などを利用したあと復職した方で、復職後の期間が6か月を過ぎた方
B型を経て就職された方も対象です。主なポイントは次のとおりです。
- 利用できる期間は3年間です(障害者総合支援法施行規則第6条の10の3)。受給者証の支給決定の有効期間は12か月以内で市町村が定めるため、1年ごとに更新しながら利用します。
- 支援の内容は、勤め先の会社、障害福祉サービスの事業所、医療機関などとの連絡調整と、働くことに伴って生じる日常生活や社会生活の問題についての相談・指導・助言です。基準では、この相談の相手として利用者さん本人だけでなく、ご家族等も明記されています(第206条の8)。
- 支援の頻度は、月1回以上、本人と対面(またはテレビ電話など対面に相当する方法)で行うこととされ、あわせて月1回以上、勤め先を訪問して職場での様子を把握するよう努めることとされています(第206条の8第2項)。
- もし利用中に離職することになっても、ほかの会社への就職などを希望する方には、相談支援事業所などと連携して次につなぐ支援を行うことが定められています(第206条の9)。
- サービスを提供できる事業所は、過去3年以内に3人以上の利用者さんが一般企業に雇用された実績のある生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援の事業所、または障害者就業・生活支援センターに限られています(第206条の7)。
利用料は、ほかの障害福祉サービスと同じく、所得に応じて月ごとの負担上限額が決まっています。厚生労働省によると、上限は生活保護・市町村民税非課税の世帯は0円、市町村民税課税世帯のうち所得割16万円未満の方(一般1)は9,300円、それ以外(一般2)は37,200円で、18歳以上の方の「世帯」は本人と配偶者の範囲で判断されます。就職してお給料を受け取るようになると、翌年度以降に区分が変わることがありますので、ご自身の負担額はお住まいの市町村の障害福祉担当窓口でご確認ください。申請も市町村の窓口で行い、相談支援専門員がいる方は、まず担当の相談支援専門員にご相談いただくとスムーズです。
3年のあとも、ひとりにならない——職場で使えるほかの支え
就労定着支援には3年という期限がありますが、それで支えがなくなるわけではありません。国の資料でも、期間の終了前後に、本人が希望する場合は障害者就業・生活支援センターなどへ引き継ぐ考え方が示されています。働き続けるうえで頼れる窓口を、あらかじめ知っておくと安心です。
- 障害者就業・生活支援センター……仕事のことと暮らしのことを、まとめて相談できる地域の窓口です。詳しくは障害者就業・生活支援センターとは?——仕事と生活をまるごと相談できる場所をご覧ください。
- ジョブコーチ(職場適応援助者)……高齢・障害・求職者雇用支援機構によると、ジョブコーチが職場に出向き、作業の進め方や職場でのコミュニケーションについて本人を支援するとともに、会社側にも障害の理解や配慮についての助言を行います。支援期間は標準2〜4か月(1〜8か月の範囲で個別に設定)で、窓口は各都道府県の地域障害者職業センターです。
- 合理的配慮……障害者雇用促進法にもとづき、事業主には、障害のある方が働くうえでの支障を改善するための配慮が求められています。「こういう工夫があれば働きやすい」と伝えることは、わがままではありません。伝え方は「合理的配慮」とは?——2024年から義務化、働く場面で頼めることで紹介しています。
- 主治医……働き始めると、生活リズムや疲れ方が大きく変わります。体調の変化は早めに主治医に伝え、服薬や通院の相談をしてください。
それでも、どうしても職場が合わないこともあります。そのときは「失敗した」と思わないでください。いったん休んで体調を整えたり、別の会社をめざしたり、もう一度B型などで働く練習から始めたりと、道はいくつもあります(サービスの支給決定は市町村の判断です)。この記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての判断や医学的な助言をするものではありません。ご自身の場合は、市町村の窓口、相談支援専門員、主治医など専門機関にご相談ください。
よくあるご質問
- Q. B型から就職した場合も、就労定着支援は使えますか?
A. はい、使えます。厚生労働省は対象者を「生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を利用して、通常の事業所に新たに雇用された障害者」で、働き続けている期間が6か月を過ぎた方としています。就職後の最初の6か月は、それまで通っていたB型事業所が相談などの支援を続けるよう努めることになっており、その後、ご本人が希望すれば就労定着支援に移ります。利用には市町村での支給決定が必要ですので、窓口や相談支援専門員にご相談ください。 - Q. 会社に障害のことを詳しく伝えていません。それでも利用できますか?
A. 就労定着支援の基準では、支援員が勤め先を訪問して職場での様子を把握するよう「努める」こととされていますが、会社にどこまで伝えるかは、ご本人にとってとても大切なことです。職場への連絡や訪問の進め方、事業所での面談など会社の外での支援の形について、利用を考えている事業所に事前によくご相談ください。 - Q. 利用料はかかりますか?
A. ほかの障害福祉サービスと同じく、所得に応じた月ごとの負担上限額があります。厚生労働省によると、生活保護・市町村民税非課税の世帯は0円、市町村民税課税世帯は所得割16万円未満の方が9,300円、それ以外の方が37,200円が上限で、18歳以上の方は本人と配偶者の所得で判断されます。就職後は収入の変化で区分が変わることがありますので、お住まいの市町村の窓口でご確認ください。 - Q. 家族が相談することもできますか?
A. できます。国の基準では、就労定着支援事業者は、利用者やその家族等に対して、雇用に伴って生じる日常生活や社会生活の問題についての相談、指導、助言などの支援を行うこととされています。「最近疲れているようだ」「朝起きられなくなってきた」など、ご家族が気づいた小さな変化も、早めに支援員にお伝えください。
就職はひとりで乗り切るものではありません。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)は、就労継続支援B型とあわせて就労定着支援事業も行っており、働く練習の段階から就職後のフォローまで、顔なじみのスタッフが切れ目なくお手伝いできます。さくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)とともに、衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業のほか、絵や詩を描くアート活動にも取り組んでおり、週1日・1日1時間からの通所ができます。約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられ、昼食は300円、送迎のご相談も承ります。見学・体験は無料、ご家族だけの見学も歓迎です。(出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」「障害者の利用者負担」、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準〔平成18年厚生労働省令第171号〕第85条の2・第182条・第195条・第202条・第206条の7〜第206条の9、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第6条の10の2〜第6条の10の4・第15条、厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料「就労定着支援に係る報酬・基準について」、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」。いずれも2026年10月6日に確認。この記事は一般的な情報提供であり、個別の判断・診断や治療に関する助言ではありません。ご自身の場合の取扱いは、市町村の窓口・相談支援専門員・主治医など専門機関にご相談ください)