制度解説

B型の工賃に税金はかかる?——非課税のしくみと扶養・確定申告の疑問【藤井寺・堺】

B型の工賃に税金はかかる?——非課税のしくみと扶養・確定申告の疑問【藤井寺・堺】

「工賃をもらうようになったら、税金を払わないといけないのでしょうか」「確定申告って、私もしないといけませんか」——通所を始めて数か月たったころ、事務所でよくいただくご質問です。ご家族からは「扶養から外れてしまうのでは」という形でご相談を受けることもあります。お金の話は、聞くのに少し勇気がいります。だからこそ、はっきりお伝えしておきたいことがあります。就労継続支援B型の工賃を受け取っている方の大多数は、所得税がかかりません。ご家族の扶養から外れることも、まずありません。この記事では、その理由を国税庁と自治体の一次情報にあたって整理しました。工賃そのものの仕組みについてはB型作業所の工賃とは?もあわせてご覧ください。

工賃は「給与」ではありません——だから源泉徴収票も届きません

まず、いちばんの土台になる話から。就労継続支援B型は、事業所と雇用契約を結ばずに利用するサービスです。そのため、B型で受け取るお金は「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれます。呼び方が違うだけの言葉遊びではなく、税金の扱いそのものが変わります。雇用契約に基づかない工賃は給与所得にあたらず、税務上は事業所得または雑所得として扱われるのが一般的です。

ここから、実務でよく驚かれることが2つ出てきます。ひとつは「事業所から源泉徴収票が届かない」こと。もうひとつは「年末調整がない」ことです。会社勤めの経験がある方ほど、11月や12月になっても何も渡されないので不安になられます。これは手続き漏れではなく、給与ではないから発生しない、というだけのことです。そのかわり、工賃の支払明細は毎月お手元に残しておいてください。あとで説明する申告や、市役所で所得を証明するときに役に立ちます。

なお、就労継続支援A型はB型と違って雇用契約を結ぶサービスですので、そこで受け取るお金は賃金=給与所得です。源泉徴収も年末調整もあります。同じ「就労継続支援」でもここは大きく異なります。両者の違いはA型とB型のちがいにまとめています。

もうひとつ、安心していただきたいことがあります。障害年金には税金がかかりません。日本年金機構は、障害年金と遺族年金は所得税および復興特別所得税の課税対象ではないため、これらを受けている方には公的年金等の源泉徴収票を送付していない、と案内しています。つまり「工賃+障害年金」で暮らしておられる方の場合、税金の計算に入ってくるのは工賃の側だけということになります。障害年金と工賃を両方受け取れることについては障害年金をもらいながらB型に通えますで詳しくご説明しています。

いくらまでなら所得税がかからない?——104万円と173万円という数字

ここが本題です。結論から書きます。令和8年分(2026年分)の所得税では、収入から差し引ける基礎控除が104万円あります。国税庁の基礎控除の表では、本人の合計所得金額が132万円以下の場合、令和8年分の基礎控除額は104万円とされています(令和7年分は95万円でしたので、引き上げられています)。差し引いた結果が0円以下なら、所得税は発生しません。

さらに、工賃のように特定の相手に継続して労務を提供して受け取る収入には、実際の経費が少なくても一定額を必要経費とみなせる「家内労働者等の必要経費の特例」という仕組みがあります。国税庁によると、この特例で認められる必要経費は令和8年分は69万円(令和7年分は65万円、令和2年分から令和6年分までは55万円)です。そして国税庁は同じページで、「この特例に該当する所得しかない人で、その年の総収入金額が173万円以下の場合は、総所得金額が基礎控除額の104万円以下となりますので、本人に所得税は課されません」と明記しています。69万円+104万円=173万円、という計算です。

では、実際の工賃はどれくらいでしょうか。厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃は月額24,141円(令和5年度の22,649円から106.6%)。大阪府が公表している令和6年度の実績では、府内のB型事業所の平均工賃月額は19,747円です。12か月分に直すと、全国平均でおよそ29万円、大阪府平均でおよそ24万円。基礎控除の104万円にも、特例まで含めた173万円にも、まったく届きません。「工賃に所得税がかかるのでは」というご心配は、金額の桁からしてまず現実になりません。大阪府の工賃実績の読み方は大阪府の工賃実績から見えることでも触れています。

ひとつだけ注意点を。家内労働者等の特例は、給与の収入金額が69万円以上ある方は使えません(給与が69万円未満の場合は、69万円から給与所得控除額を差し引いた残額と実際の経費を比べて高い方が必要経費になります)。アルバイトを掛け持ちしている方は、工賃だけを見て判断せず、給与と合わせて考える必要があります。また、令和8年分のこれらの金額は令和8年12月1日に施行されるものです。ご自身に特例が使えるかどうかを含め、最終的な判断は自己判断せず、所轄の税務署など専門機関にご確認ください。

扶養・住民税・利用料はどうなりますか——ご家族が心配される3つ

①ご家族の扶養から外れませんか。これがいちばん多いご質問です。国税庁は先ほどの特例のページで、「その年の総収入金額が131万円以下の場合は、扶養者の所得税額の計算上、配偶者控除あるいは扶養控除の対象となります」としています。令和8年分以後、扶養親族と認められる合計所得金額の上限は62万円で、69万円+62万円=131万円という計算です。年間の工賃が131万円を超えることは、平均像から考えればまず想定しにくい金額です。ご家族が受けられる扶養控除は一般の控除対象扶養親族で38万円。それに加えて、障害者控除が一般の障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居の特別障害者で75万円あります(いずれも所得税)。通所を始めたことで、ご家族の税金が増えるという心配はしていただかなくて大丈夫です。

②住民税はどうなりますか。住民税には、所得税とは別に非課税の基準があります。堺市の案内では、1月1日現在で障害者・未成年者・寡婦またはひとり親に該当し、前年中の合計所得金額が135万円以下の方は、均等割も所得割もかからない非課税とされています。障害者控除の額も所得税とは異なり、住民税では26万円(特別障害者30万円、同居の特別障害者53万円)です。金額の基準は市によって細部の運用が異なることがありますので、藤井寺市・堺市それぞれの市民税の窓口でご確認ください。

③工賃が増えたら、利用料が上がりませんか。これも心配されるところですが、障害福祉サービスの利用者負担を判定するときの「世帯」は、18歳以上の方の場合、本人とその配偶者のみです(堺市の案内による)。同居されているご家族の収入は、判定に含まれません。そして市民税非課税世帯に属する方は「低所得」区分となり、利用者負担は0円です。さくら福祉訓練所・さくら作業所でも約9割の方が自己負担0円で通っておられます。詳しくはB型の利用料はいくら?をご覧ください。

最後に、それでも申告をしたほうがよい場合を挙げておきます。ひとつは、工賃のほかにアルバイトなどの給与があり、源泉徴収された所得税が納めすぎになっているとき。もうひとつは、医療費が多くかかった年に医療費控除で還付を受けたいときです(自立支援医療を使っていても、窓口で支払った自己負担分は対象になり得ます。詳しくは自立支援医療とはをご覧ください)。また、所得税がかからない場合でも、所得・課税証明書が必要なときや、国民健康保険料・公営住宅の家賃などの算定のために、市役所への住民税の申告が必要になることがあります。この記事は一般的な情報提供であり、個別の税額や申告の要否を判断するものではありません。ご自身の場合の取扱いは、所轄の税務署、お住まいの市の市民税担当窓口、相談支援専門員など専門機関にご相談ください。

よくあるご質問

  • Q. 工賃をもらうと、障害年金は減りませんか?
    A. 一般的な障害基礎年金・障害厚生年金は、工賃を受け取ったことで減額される仕組みにはなっていません。ただし、20歳前の傷病による障害基礎年金には所得による支給制限があり、日本年金機構によると、前年の所得額が3,761,000円を超えると年金額の2分の1が、4,794,000円を超えると全額が支給停止となります(支給停止となる期間は10月から翌年9月まで、扶養親族がいる場合は1人につき所得制限額が38万円加算されます)。B型の工賃はこの水準からは大きく離れた金額ですが、ご自身の年金の種類や他の収入によって扱いが変わりますので、年金事務所にご確認ください。
  • Q. 事業所から源泉徴収票はもらえますか。年末調整はありますか?
    A. B型は雇用契約を結ばないサービスのため、工賃は給与所得ではありません。したがって源泉徴収票の発行も年末調整もありません。手続きが漏れているわけではありませんのでご安心ください。所得を証明する必要がある場面に備えて、毎月の工賃支払明細は保管しておかれることをおすすめします。金額の証明が必要になったときは、事業所にご相談いただければ支払実績をお出しできます。
  • Q. 工賃が増えたら、親の扶養から外れてしまいますか?
    A. 国税庁は、家内労働者等の必要経費の特例に該当する所得しかない場合、その年の総収入金額が131万円以下であれば扶養控除・配偶者控除の対象になるとしています。厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」による全国平均工賃は月額24,141円、大阪府の令和6年度実績では月額19,747円ですので、12か月分に直しても131万円には遠く及びません。なお、健康保険の被扶養者の基準は税金とは別の制度ですので、加入している健康保険組合や協会けんぽにご確認ください。
  • Q. 確定申告や住民税の申告が必要かどうか、どこで相談できますか?
    A. 所得税の確定申告については所轄の税務署(国税庁の管轄区域一覧によると、藤井寺市は富田林税務署、堺市は堺税務署の管轄です)、住民税の申告については藤井寺市・堺市それぞれの市民税担当窓口が相談先です。確定申告の時期には市役所などに申告相談の会場が設けられることもあります。事業所としても、工賃の支払実績のご用意や、相談支援専門員へのおつなぎといったお手伝いはできますので、まずはお気軽にお声がけください。金額の判断そのものは、税務署や市の窓口など専門機関にご相談ください。

お金のことは、聞きにくいまま抱え込んでしまいがちです。見学のときに「税金はどうなるんですか」と聞いていただいて、まったく構いません。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)とさくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)では、衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業のほか、絵や詩を描くアート活動にも取り組んでいます。週1日・1日1時間からの通所ができ、障害年金と工賃は両方受け取ることができます。約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられ、昼食は300円、送迎のご相談も承ります。見学・体験は無料、ご家族だけの見学も歓迎です。(出典:国税庁タックスアンサー「No.1810 家内労働者等の必要経費の特例」「No.1199 基礎控除」「No.1180 扶養控除」「No.1160 障害者控除」および「大阪国税局管内の税務署の所在地・案内」、厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」、大阪府「工賃(賃金)実績の公表」(令和6年度実績)、堺市「申告と納税」「令和8年度の税額の計算方法」「利用者負担」、日本年金機構「障害年金や遺族年金を受けている人にも公的年金等の源泉徴収票は送付されるのでしょうか」「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」。いずれも2026年9月13日に確認。この記事は一般的な情報提供であり、個別の税額・申告の要否・診断や治療に関する助言ではありません。ご自身の場合の取扱いは、税務署・市の窓口・相談支援専門員など専門機関にご相談ください)

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さくら福祉訓練所(藤井寺市)

072-926-8545

平日・祝 10:00〜16:30 / 土曜 10:00〜14:00

さくら作業所(堺市中区)

072-220-6027

平日 10:00〜16:30

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