「障害年金がもらえるかもしれない」と聞いて、調べてはみたものの、書類の名前も手続きの順番も分からないまま止まってしまう——さくらでも、そういうご相談をよくいただきます。障害年金は自分で請求しないと受け取れない年金です。制度の側から「あなたは対象です」と教えてくれることはありません。けれど、やることの順番さえ分かってしまえば、道筋はそれほど複雑ではありません。この記事では、日本年金機構が公表している内容にもとづいて、何から始めるのか・診断書はどうやってもらうのか・どこに出すのかを、順番どおりに整理します。
すべては「初診日」から始まります
障害年金の手続きは、病名でも、今のつらさの重さでもなく、「初診日」を決めるところから始まります。初診日とは、日本年金機構の説明では「障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」のことです。途中で病院を変わっている場合は、いちばん最初に診てもらった日が初診日になります。「近所の内科でまず相談した」「心療内科の前にかかりつけ医に話した」——そういう日が初診日になることもあります。
なぜここが最初かというと、初診日によって次の3つが全部決まってしまうからです。
◎ ①どの年金を請求するか
初診日に国民年金に加入していた方(または20歳前、あるいは日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間だった方)は障害基礎年金、初診日に厚生年金保険に加入していた方は障害厚生年金の対象になります。会社勤めをしていた時期に最初に受診していたかどうかで、請求できる年金の種類が変わります。
◎ ②いつの状態で判断されるか(障害認定日)
障害の程度は、初診日から1年6か月を経過した日(この日を「障害認定日」といいます)の状態で判断されます。1年6か月以内に症状が固定して治療の効果が期待できなくなった場合は、その日が障害認定日になります。
◎ ③保険料を納めていたかどうかの判定日
障害年金には保険料の納付要件があります。原則は、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間のうち3分の2以上が、納付済みまたは免除されていることです。これを満たさない場合でも、初診日が令和18年(2036年)3月末日までにあり、初診日において65歳未満で、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ、納付要件を満たすものとして扱われます。なお、20歳前の、年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件そのものがありません。
ここで大事なのは、「納めていなかった時期がある=あきらめる」ではないということです。免除や納付猶予の手続きをしていた期間は「未納」ではありません。判定は初診日の前日時点で行われるため、ご自分の記録がどうなっているかは年金事務所で確認するのが確実です。
診断書をもらう前に、年金事務所へ相談してください
ここが、いちばんつまずきやすいところです。多くの方が「まず主治医に診断書をお願いしよう」と考えるのですが、日本年金機構は、診断書を作成する前に必ず年金事務所等に相談するよう案内しています。理由は、相談しないと次の2つが決められないからです。
◎ 使う診断書の様式が違う
障害年金の診断書は1種類ではなく、障害の種類ごとに8つの様式に分かれています。眼/聴覚・鼻腔機能・平衡機能・そしゃく・嚥下・言語機能/肢体/精神/呼吸器疾患/循環器疾患/腎疾患・肝疾患・糖尿病/血液・造血器・その他、の8種類です。違う様式で書いてもらってしまうと、費用も時間も無駄になります。
◎ 「いつの状態」を書いてもらうかが決まっている
診断書には「現症日」——どの時点の状態を書いたか——という欄があります。障害認定日で請求する場合は障害認定日より3か月以内の現症のものが必要です。さらに、障害認定日と請求日が1年以上離れている場合は、請求日前3か月以内の現症の診断書も併せて必要になります。ここを外すと、書いてもらった診断書が使えません。
そのうえで、そろえる書類は主に次のとおりです。
①年金請求書(障害基礎年金は様式第107号)/②医師の診断書(上記の所定様式)/③受診状況等証明書/④病歴・就労状況等申立書。ほかに、生年月日を明らかにできる書類(戸籍謄本など。マイナンバーを記入すれば省略できる場合があります)と、受取先の金融機関の通帳等のコピーが必要です。
③の受診状況等証明書は、初診日を証明するための書類です。日本年金機構の案内では、初診日を特定するため、原則として、初診時の医療機関が作成した受診状況等証明書または診断書の添付が必要とされています。つまり、いま通っている病院と初診の病院が違う場合は、最初にかかった病院に連絡して書いてもらうことになります。カルテの保存期間の関係で証明が取れないこともありますが、その場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」という様式が用意されていますので、ここも年金事務所にご相談ください。
④の病歴・就労状況等申立書は、唯一ご本人(またはご家族)が書く書類です。日本年金機構の記載要領では、同じ医療機関を長期間受診していた場合や、長期間受診していなかった場合は、その期間を3年から5年ごとに区切って書くこととされています。受診していた期間は通院期間・受診回数・入院期間・治療経過・医師から指示された事項・転医や受診中止の理由・日常生活の状況を、受診していなかった期間はその理由・自覚症状の程度・日常生活の状況・就労状況を、それぞれ具体的に書きます。「調子が良い日のこと」ではなく、しんどい日を含めた普段の状態を書くのがこの書類の役割です。ここは時間がかかりますので、通院の記録やお薬手帳を手元に置いて、少しずつ進めてください。通院にかかる費用の負担を軽くする制度については通院費が1割負担になる「自立支援医療」の記事もあわせてどうぞ。
提出先は、請求する年金の種類や初診日当時の加入状況によって変わります(障害基礎年金は原則としてお住まいの市区町村の年金窓口、初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は年金事務所または街角の年金相談センターなど)。どこに出すかも含めて、最初の相談で確認するのが確実です。電話でのご相談は「ねんきんダイヤル」0570-05-1165(月曜8:30〜19:00、火〜金曜8:30〜17:15、第2土曜9:30〜16:00)でも受け付けています。
「いつから受け取れるか」で、請求の形が2つに分かれます
手続きにはもう一つ、知っておいていただきたい分かれ道があります。
◎ 障害認定日による請求
障害認定日(初診日から1年6か月)の時点で、すでに障害の状態に該当していた場合の請求です。当時の診断書が用意できれば、さかのぼって受け取れる可能性があります。
◎ 事後重症による請求
障害認定日には該当しなかったけれど、その後に症状が重くなって該当するようになった場合の請求です。この場合、年金は請求日の翌月分からの支給になります。つまり請求が遅れた分だけ、受け取り始める時期も遅れます。「いつか落ち着いたら出そう」と置いておくと、その間の分は戻ってきません。また、事後重症の請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。
受け取れる額も見ておきましょう。令和8年4月分からの障害基礎年金は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(いずれも昭和31年4月2日以後生まれの方の額)。2級で月あたりおよそ7万円という水準です。お子さんがいる場合は加算があり、2人目までは1人につき年額243,800円、3人目以降は1人につき年額81,300円が加わります。
そして、よくいただく質問にもう一度お答えしておきます。障害年金を受け取りながら、就労継続支援B型に通って工賃を受け取ることはできます。B型は雇用契約を結ばないため、通うことで年金が止まるという仕組みにはなっていません。詳しくは障害年金をもらいながらB型で働けますか?をご覧ください。精神障害者保健福祉手帳は障害年金とは別の制度で、申請できる時期も条件も異なります(精神障害者保健福祉手帳のメリットと申請方法)。また、まだ会社に在籍していて休職中の方は、先に傷病手当金の対象になる場合があります(休職中の生活費を支える「傷病手当金」)。
最後に、大切なことを一つ。障害年金に該当するかどうかを判断するのは、この記事でも、事業所でもありません。診断書の内容は主治医が医学的に判断するものであり、支給の決定は日本年金機構が行います。ご自身が対象になるかどうか、どの請求の形になるかは、必ず年金事務所・街角の年金相談センター、または市区町村の年金窓口など専門機関にご相談ください。
よくあるご質問
- Q. 初診日の病院がもうなくなっています。あきらめるしかないですか?
A. あきらめる前に年金事務所へご相談ください。障害年金では初診日を特定するため、原則として初診時の医療機関が作成した受診状況等証明書または診断書の添付が必要とされていますが、廃院やカルテの保存期間の関係で証明が取れない場合に備えて、日本年金機構は「受診状況等証明書が添付できない申立書」という様式を用意しています。どのような資料が初診日の参考になるかは個別に扱いが異なりますので、まずは年金事務所でご確認ください。 - Q. 保険料に未納の時期があります。もう請求できませんか?
A. 一概にそうとは限りません。原則は初診日のある月の前々月までの加入期間の3分の2以上が納付または免除されていることですが、初診日が令和18年3月末日までにあり、初診日において65歳未満で、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納がなければ納付要件を満たすものとされています。また免除や納付猶予の手続きをしていた期間は未納ではありません。20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件そのものがありません。ご自身の記録は年金事務所で確認できます。 - Q. 診断書はいつの時点の状態を書いてもらえばよいですか?
A. 障害認定日による請求では、障害認定日より3か月以内の現症の診断書が必要です。障害認定日と請求日が1年以上離れている場合は、請求日前3か月以内の現症の診断書も併せて必要になります。診断書は障害の種類ごとに8つの様式に分かれており、様式や現症日を間違えると使えません。日本年金機構も「診断書を作成する前に、必ず年金事務所等にご相談ください」と案内していますので、主治医にお願いする前に窓口で確認してください。 - Q. 病歴・就労状況等申立書がうまく書けません。
A. 日本年金機構の記載要領では、同じ医療機関を長期間受診していた場合や長期間受診していなかった場合は、その期間を3年から5年ごとに区切って記入することとされています。受診していた期間は通院期間・受診回数・入院期間・治療経過・医師から指示された事項・転医の理由・日常生活の状況を、受診していなかった期間はその理由・自覚症状の程度・日常生活や就労の状況を具体的に書きます。お薬手帳や診察券、通院の記録を並べて時系列を作ると書きやすくなります。書き方に迷うときは年金事務所の窓口でも相談できます。
手続きの書類を前にすると、それだけで疲れてしまう日もあると思います。さくらでは、通いながら生活のリズムを整えていかれる方が多くいらっしゃいます。障害年金と工賃は両方受け取れますし、週1日・1日1時間からの通所ができます。見学・体験は無料、ご家族だけの見学も歓迎です。藤井寺・堺のどちらでもご相談ください。(出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」「障害基礎年金を受けられるとき」「障害年金の請求手続き等に使用する診断書・関連書類」「病歴・就労状況等申立書を提出するとき」「ねんきんダイヤル」。金額は令和8年4月分からの額。この記事は一般的な情報提供であり、支給の可否や請求方法の個別の判断は、年金事務所・街角の年金相談センター・市区町村の年金窓口・主治医など専門機関にご相談ください)