「来週、学校で進路の三者懇談があります。何を聞けばいいのか分からなくて」——秋になると、特別支援学校高等部にお子さんが通うご家族から、こうしたご相談をいただくことが増えます。進路面談は、ご本人・ご家族・先生の三者で卒業後の進路を考える大切な場ですが、限られた時間の中で、聞きたかったことを聞けないまま終わってしまうことも少なくありません。この記事では、学校側がどんなしくみで進路指導をしているのかを先に押さえたうえで、面談で聞いておきたい質問をリストにしました。特別支援学校の現場実習が始まる季節——進路選びで大切にしたいことでは実習中の見方をお伝えしましたので、あわせてお読みください。制度の運用は学校や市によって異なりますので、個別のことは在籍校の進路担当の先生とお住まいの市の窓口にご確認ください。
面談は「決める場」ではなく「情報をそろえる場」——学校側のしくみを先に知っておく
特別支援学校高等部学習指導要領(平成31年文部科学省告示第14号)の総則では、「生徒が自己の在り方生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう,学校の教育活動全体を通じ,組織的かつ計画的な進路指導を行うこと。その際,家庭及び地域や福祉,労働等の業務を行う関係機関との連携を十分に図ること」と定められています。つまり進路指導は、担任の先生が1回の面談で決めるものではなく、学校全体で、家庭や福祉・労働の機関とつながりながら、3年間を通して進めるものだということです。面談は、その途中経過をご本人とご家族と先生がすり合わせる場だと考えると、「今日ここで決めなければ」という気負いが少し軽くなります。
もうひとつ知っておきたいのが「個別の教育支援計画」です。学校教育法施行規則第134条の2では、校長は特別支援学校に在学する児童生徒について、医療・保健・福祉・労働等の関係機関との連携の下に行う長期的な支援の計画(個別の教育支援計画)を作成しなければならず、その作成にあたっては「当該児童等又はその保護者の意向を踏まえつつ、あらかじめ、関係機関等と当該児童等の支援に関する必要な情報の共有を図らなければならない」とされています。文部科学省の事務連絡(令和3年6月30日)では、この計画を進学先に伝えるなど「就学前から就学時、そして進学先まで、切れ目ない教育支援に生かすことが大切」であり、多くの関係者が関与するため「保護者の同意を事前に得るなど個人情報の適切な取扱いに十分留意する」よう求めています。ご本人の得意なこと・苦手なこと・配慮してほしいことが書かれたこの計画は、卒業後の事業所にとっても大切な引き継ぎ資料になります。面談で「個別の教育支援計画を一緒に見せてください」とお願いすることは、まったく失礼なことではありません。
面談で聞いておきたい質問リスト——4つの場面に分けて
すべてを1回で聞く必要はありません。学年や時期に応じて、必要なものを選んで、メモにしてお持ちください。
- ① 学校での「いま」を知る質問
・学校で集中して取り組めている作業・活動は何ですか。逆に、しんどそうな場面はどんなときですか
・休憩の取り方や、困ったときの伝え方は、学校ではどうしていますか(家での様子と違うことがよくあります)
・個別の教育支援計画に、卒業後に向けてどんな目標や配慮が書かれていますか。一緒に見せていただけますか - ② 実習・体験についての質問
・今年度、校内実習や現場実習はいつ、どこで、何日間の予定ですか。実習先はどう決まりますか
・実習先として、就労継続支援B型や生活介護などの福祉事業所も候補に入りますか。家族が先に見学してもよいですか
・実習の評価は、どんな形で本人と家族に伝えてもらえますか(生活介護と就労継続支援B型の違い——卒業後の進路選びで迷ったらも参考にしてください) - ③ 就労選択支援と卒業後の手続きについての質問
・令和7年10月から始まった「就労選択支援」について、学校としてはどの学年・どの時期の利用を勧めていますか。校内実習や現場実習の場面を使ったアセスメントは可能ですか
・卒業後に福祉サービスを使う場合、市への申請はいつごろ始めればよいですか。相談支援事業所はどう探しますか
・個別の教育支援計画は、卒業後の事業所や相談支援事業所に渡してもらえますか(同意書が必要なら、いつ出せばよいですか) - ④ 卒業後のつながりについての質問
・卒業後、学校は何年くらい、どんな形で様子を見てもらえますか。進路先で困ったとき、学校に相談してもよいですか
・進路先が合わなかったときに、相談できる窓口はどこですか(障害者就業・生活支援センター、相談支援専門員など)
質問の数が多く感じるかもしれませんが、大事なのは「全部聞くこと」ではなく、ご本人が自分の言葉で答えられる質問を1つは用意しておくことです。「学校でいちばん好きな作業はどれ?」「実習で疲れたのはどんなとき?」——面談の主役はご本人です。先生とご家族だけで話が進みそうになったら、ご本人に向き直って聞いてみてください。
就労選択支援と受給者証——「いつまでに何をするか」の目安
卒業後にB型を希望する場合、知っておきたい新しいしくみが就労選択支援です。文部科学省と厚生労働省の連名通知「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて」(令和7年5月15日)によると、就労選択支援は令和7年10月1日に始まった障害福祉サービスで、短期間の作業などを通して就労に関する適性や意向を整理(アセスメント)し、関係機関によるケース会議で方向性を確認するものです。同通知では、令和7年10月以降、就労継続支援B型を利用する意向がある場合は、原則として就労選択支援を予め利用する必要があるとされ(50歳に達している方や障害基礎年金1級を受給している方などは除く)、特別支援学校等の生徒については「1年次から利用可能であり、また、在学中に複数回実施することも可能」とされています。支給決定期間は原則1か月で、作業場面を使ったアセスメントは2週間程度、状況によっては5日間程度の短期間でも可能とされています。15歳以上18歳未満の生徒が利用する場合は、児童相談所長が障害福祉サービスを受けることが適当と認めて市町村長に通知することが必要とも書かれています。また、学校の校内実習や現場実習の場面に就労選択支援の事業者が出向いて作業を観察することもできるとされ、学校が個別の教育支援計画を事業者と共有する際は「本人や保護者への同意を得た上で」行うことが求められています。就労選択支援の中身は就労選択支援が始まって1年——B型を利用するまでの流れはどう変わった?に詳しくまとめています。
実際の流れの参考として、大阪市が相談支援事業所に出した事務連絡(令和7年8月26日)では、卒業後すぐにB型を希望する支援学校高等部等の卒業予定者について、①本人・保護者・学校・就労選択支援事業者・相談支援事業者で日程調整→②就労選択支援の利用申請(サービス等利用計画案の作成)→③認定調査→④支給決定→⑤就労選択支援の利用→⑥B型が適当と判断されたらB型の利用申請→⑦支給決定→⑧卒業後に利用開始、という8段階が示されています。同じ事務連絡には「利用希望者は、夏休み等の休暇期間を活用してアセスメントを受けることが多いと想定されます」とあり、連名通知でも夏期休業中に希望が集中して事業者が受け入れ困難になる可能性が指摘されています。「3年生の夏までに就労選択支援を受けておく」を目安に、1・2年生のうちから面談で日程を相談しておくと安心です(大阪市以外の市は運用が異なることがあります)。
受給者証の申請窓口は、藤井寺市にお住まいの方は市役所1階6番窓口の福祉総務課で、市のページ(2026年10月6日更新)では「申請時に希望するサービスを伺う→調査員による聞き取り調査→審査会でサービスを受けられる程度を決定→希望する事業所と契約」という流れと、審査会で医師の意見書を求められることがあるため主たる障害のかかりつけ医の氏名・住所を控えておくよう案内されています。堺市にお住まいの方は各区役所が窓口で、身体障害・知的障害は地域福祉課、精神障害・難病は保健センター、美原区はどちらも地域福祉課が担当し、手続きの前に必ず事前相談をするよう求められています(2026年4月17日更新)。藤井寺市は羽曳野市・柏原市と隣接していますので、近隣市にお住まいの方は、それぞれの市の障がい福祉担当課にご確認ください。
面談のあとに、家族でできること
面談で得た情報は、その日のうちに家族で簡単に振り返っておくと、次の面談につながります。ポイントは3つです。1つ目は、先生の見立てとご本人の気持ちを分けてメモすること。「先生はこう言っていた」「本人はこう感じていた」を並べて書くと、次に何を確かめればよいかが見えてきます。2つ目は、候補になった進路先を、できるだけ早く見学すること。学校の実習先だけでなく、家から通いやすい事業所をご家族が先に見ておくと、本人に「こんな場所だったよ」と伝えられます。さくら福祉訓練所・さくら作業所では、在学中の見学・体験を受け入れており、ご家族だけで先にお越しいただくこともできます。3つ目は、「まだ決めなくていい」をご本人に伝えておくこと。進路先は1回で決める必要はなく、卒業後に合わなければ相談支援専門員と一緒に変えることもできます。家族での話し合いの進め方は家族会議のすすめ——本人の気持ちを置き去りにしない進路の決め方にまとめています。
特別支援学校の3年間は、あっという間に過ぎます。けれど、進路面談を「情報をそろえる場」と捉え直し、聞きたいことを少しずつ聞いていけば、卒業のときには、ご本人もご家族も納得のいく場所にたどり着けるはずです。私たちは、その途中の見学・体験・相談を、いつでもお手伝いします。
よくあるご質問
- Q. 進路面談に、本人を同席させたほうがよいですか?
A. 原則として、ご本人が主役です。学習指導要領も「生徒が主体的に進路を選択することができるよう」進路指導を行うとしています。ただ、長い話し合いが負担になる方もいますので、「最初の10分だけ同席して、本人が答えられる質問を1つ用意する」「途中で退席してよいと先に伝えておく」など、ご本人に合った形を先生と相談してください。ご本人が話せなかったことは、あとでご家族が伝えれば十分です。 - Q. 「B型を希望したい」と伝えたら、就労選択支援を先に受けるように言われました。必要なのでしょうか?
A. 令和7年10月以降、就労継続支援B型を利用する意向がある場合は、原則として就労選択支援を予め利用することとされています(文部科学省・厚生労働省の連名通知)。特別支援学校等の生徒は1年次から利用でき、在学中に複数回受けることもできます。アセスメントは2週間程度、場合によっては5日間程度で、校内実習や現場実習の場面を使って行うこともできます。近くに事業者がない・待機が長いなどの場合は、就労移行支援事業者等によるアセスメントに代えられることもありますので、市の窓口と相談支援事業所にご確認ください。 - Q. 個別の教育支援計画は、見せてもらえますか?卒業後の事業所にも渡せますか?
A. 個別の教育支援計画は、学校教育法施行規則第134条の2により、ご本人またはご家族の意向を踏まえて作成することとされています。見せてほしいとお願いして問題ありません。卒業後の事業所や就労選択支援事業者への共有は、本人・保護者の同意を得たうえで行うことが求められていますので、学校から同意書の提出を求められたら、内容を確認したうえで出してください。この計画が引き継がれると、事業所側も初日から配慮を準備しやすくなります。 - Q. 18歳になる前でも、卒業後に向けた福祉サービスの手続きはできますか?
A. できます。就労選択支援については、15歳以上18歳未満の生徒が利用する場合、児童相談所長が障害福祉サービスを受けることが適当と認めて市町村長に通知することが必要とされています(連名通知)。B型などの受給者証の申請時期や必要書類は市によって運用が異なりますので、3年生になる前の面談で「いつから何を始めればよいか」を先生に確認し、お住まいの市の障がい福祉担当課と相談支援事業所に早めにご相談ください。
進路面談は、1回で答えを出す場ではなく、ご本人・ご家族・学校が少しずつ情報をそろえていく場です。さくら福祉訓練所(藤井寺市林6-6-30/072-926-8545・平日と祝日10:00〜16:30、土曜10:00〜14:00)では衣類の検品・仕分け・販売、箱折りやシール貼りなどの軽作業、絵や詩を描くアート活動に、さくら作業所(堺市中区堀上町158-4/072-220-6027・平日10:00〜16:30)ではお弁当作りや調理補助、お米の選別、箸袋入れなどの軽作業やパソコン練習に取り組んでいます。知的・身体・精神のどの障がいの方も利用でき、週1日・1日1時間からの通所ができます。約9割の方が利用料の自己負担0円で通っておられ、昼食は300円、送迎のご相談も承ります。在学中の見学・体験は無料で、ご本人と一緒でも、ご家族だけでもお越しいただけます。(出典:文部科学省「特別支援学校高等部学習指導要領」(平成31年文部科学省告示第14号)第1章総則、学校教育法施行規則第134条の2(e-Gov法令検索)、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 事務連絡「個別の教育支援計画の参考様式について」(令和3年6月30日)、文部科学省・厚生労働省「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて」(7初特支第1号・障障発0515第2号、令和7年5月15日)、大阪市福祉局 事務連絡「支援学校高等部等卒業(予定)者における就労選択支援の利用に向けた取扱い等について」(令和7年8月26日)、藤井寺市「障害福祉サービス等について」(2026年10月6日更新)、堺市「障害福祉サービス申請書等様式集」(2026年4月17日更新)。いずれも2026年10月27日に確認。この記事は一般的な情報提供であり、進路指導の進め方や面談の時期は学校ごとに、福祉サービスの支給決定はお住まいの市町村が判断します。個別のことは在籍校の進路担当・お住まいの市の窓口・相談支援専門員にご相談ください)